人間が言語を獲得するとき、単語または短い表現を使えるようになるにはどんな条件が必要なのかを、僕はしばしば考えます

日本人が英語を学ぶ場合、単語一つの意味を調べて意味がわかったとしても、その単語を会話の中ですぐに使えるようになるのかというと、そうではありません

それでも、そもそも単語の意味がわからなければ使えるはずはないと思い込んでいるから、意味を調べるなりして知りたがるわけです

一方で、正しい意味を知らずに使えてしまうケースも多くあります

例えば、「役不足」ですが、サッカーの試合を見ていたとして、ある選手がミスばかりするので、それを見ていた誰かが「あの選手じゃあ役不足だよ」という具合に「役不足」を使う人は少なくないと思います

「力不足」の意味で「役不足」を使っていると推測できます

実際に、僕も少し前までは「役不足」を誤用し、本来の意味を知らずにいました

なぜこのように意味を知らないのに言葉を運用できているのかを考えると、使うには言葉の意味よりもむしろ、その言葉の前後に来る表現や状況の方が重要なのではないかと、僕は考えています

多くの人が「役不足」を使っている状況を見て、僕がそれを無意識に「このようなときに使えるのか」と思い込んできたのでしょう

しかし、同時に、言葉は時代によって進化するもので、「役不足」が「力不足」と同じ意味で使われるようになることを認めなくてはいけないのかもしれません

英語を教えるときに、単語の意味を教えることに意味がないわけではないですが、生徒さんが実践で使えるようにしていくためには、単語をどのような状況で使えるのか知ってもらう工夫が必要だなと思いました

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Sさんが今日のレッスン後に、ご自身の海外旅行体験を話してくれました

飛行機の機内で客室乗務員に、温かい飲み物を欲しくて英語で頼もうとしたそうです

Sさんはトラベル英会話の本でいくつか文を予習をしていたらしく、その中にちょうど「温かい飲み物をいただけませんか?」という文が英文で紹介されていたのですが、本番で頭が真っ白になってしまい、せっかく覚えていた表現を使うことができずに、結局は頼むのを止めてしまったそうです

文をまるまる覚えていたとしても、その文を忘れてしまうと何も口から出てこなくなってしまう経験は、日本人の多くが経験することかもしれません

今日のレッスンの中で、ホテルに泊まったという状況でSさんに、「鍵を中に置いたまま部屋を出てしまい、入れなくなった」や「エレベーターの音がうるさいので、違う部屋に移りたい」などを完全なアドリブで伝える練習をしました

この練習をやったあとにSさんが気付いたことは、「あの飛行機で温かい飲み物を頼みたかったとき、”Hot drink, please.”くらいなら言えたはずなのに・・・」ということだったようです

人は、英語を覚えることで満足するのではなく、「外国人と意思の疎通がとれた」という、もっとシンプルな部分に満足するのだと僕は思います

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ある、言語に関する本の中に、このようなことが書いてあります

「英語にも、国ごと地域ごとにアクセントや使用する単語、表現の違いがあるが、それらに優劣を付けられる根拠はない」

もう少しわかりやすく表現すると、例えば、「イギリス英語の方がアメリカ英語より優れているという言い方はできない」ということです

インドの英語は、インド独特のアクセントを持っているし、シンガポールの英語も同じですが、それらはそれぞれ言語として成り立っているのであって、それぞれの国や地域では、その使われている英語が「基準」となります

多くの英語学習者は、自分の先生が使う英語のアクセントが、どこの国のものかを気にしてしまいがちではないでしょうか

なぜか先生の使う英語が、きれいにアメリカやカナダの発音っぽいと、それだけで安心してしまう傾向は否めません

本来は、将来オーストラリアへ転勤になる人がいたとしたら、その方はオーストラリア人の先生に英語を教わるのがベストでしょう

そうすれば、オーストラリアの文化ごと学べるメリットもあります

もし、学習者が特に英語の使用目的をもっていなければ、フィリピン人の先生でもイタリア人の先生でも日本人の先生でも良いはずです

問題なのは先生の国籍や使用言語なのではなく、その先生から何を学び取るとこができるかだと、僕は思います

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時代が流れると、言語も進化します
江戸時代の人々が、現在の日本人が使う言葉のどれくらいを理解できるか・・・

もしかしたら、ほぼ理解不可能かもしれません

人間は新しくものを作り、それに名前を付けます

テレビ、新幹線、携帯電話などは江戸時代の人は見たこともないですから、それらを見ても何なのか認知すらできないかもしれないですし、名前も知らないので、彼らのボキャブラリーの中にはないものです

僕が高校を卒業してから一年間パナマに住んで、日本に帰ってきたのが1996年の夏でした

まず気が付いたのは、街を歩いている人の多くが、小さい電話を持ち歩いていたことです

友達も持っていたので、「それ何?」と質問したら、「えっ、知らないの?ピッチだよ」と友達は答えました

僕は「ピッチって何?」と更に聞いたら、「ピー、エイチ、エス」と友達は教えてくれたのですが、僕は余計に混乱しました

一年間日本にいなかっただけで、僕の知らない日本語が沢山増えていて、帰ってきてから数週間くらいは自分が世間においていかれている感じがしました

物だけではなく表現方法も、ものすごい早さで進化しています

日本に住んでいて、「英語がなかなかわかるようにならない」というのは、ある意味当然なことです

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Fさんがレッスンの前に、このような悩みを話してくれました

英語を読むときはすぐに内容が頭の中に入ってくるけど、同じ内容のものを耳で聞くと、さっぱり理解ができなくなる・・」

この話を深くまで探ってみたら、Fさんは英語を読むときには瞬時に日本語に訳していたので、内容がわかっていたそうです

確かに、読みながらであれば、自分のペースで情報を入れることができるし、理解が難しい部分は、何回か読み直すことだってできます

それが、リスニングになったときには、スピードが速すぎて日本語訳する暇がないために、理解ができなくなっているようです

今日のレッスンでは、実際にFさんがリスニングしたときにどう認知しているのかを観察することにしました

やっぱり、日本語に訳す時間がないくらいの長文を聞いたときには、話の内容が全くわからなくなっています

僕はFさんに、聞こえてきた英語を頭の中で絵にする訓練が必要だと伝えました

おそらく、Fさんにとっては難しく、慣れるのに時間がかかります

ですが、これができないことには、相手が英語で「ベラベラベラー・・・」と話してきたときには、細かい部分は聞き逃したとしても、全体で何を話しているのかすら理解できません

最初のうちは全くわからないかもしれないですが、「この人は何を話しているのかな」という予想でもいいので、そのストーリーを頭の中で絵にできるように訓練が必要だと感じました

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